|
桃の農園・私が育てています。
〜園主・有田一教より皆様へご挨拶〜
皆さんはじめまして。
私の夢が一つ叶いましたのでお手紙します。二十数年前のことです。
世の中がまだザワザワしていた頃、好きな歌がありました。アメリカのしわがれ声の歌手ボブ・ディランが唄っていました。もう歌詞もよく憶えていませんがあのかすれた声で、
「マスターピース・・・・」と甲高く叫ぶようにうたう一節だけ耳に残っています。
確か・・・・いつか俺も最高傑作を造ってやる・・・・いつか・・・・という様な内容だったかと思います。
それから何十年も私の頭の片隅に占領し続けてきたフレーズなんです。
英語はよく解りませんが、それであぁマスターピースは最高傑作という意味なのかと想像しました。
それから時代は落ち着きましたが、私の頭の中は、いつでも微熱が続いているようで、
マスターピースの小波(さざなみ)が立っていました。
その頃私は養鶏をしていました。それから暫くして、山を開墾して農園を造りました。
最初は何の気無しに、鶏糞を農園に入れていました。これがどうもいいようなんです。
いつの間にか養鶏は止めて果樹一本になっていました。鶏糞よりも完熟した堆肥の方が良いということも知りました。
堆肥は専門の人に作ってもらうようになりました。
それから十五年。毎年毎年、堆肥ばかりいれ続けました。
マスターピースという微熱がそうさせたのかも知れません。
|
|
|